宮花物語
黒音の三夜通いが進んでいるうちに、黄杏の体はすっかり回復していた。

「そうか……黄杏の元に、通えるのか。」

信志はの心は、浮き立った。

「今夜は、黄杏の屋敷へ行こう。」

久々に、黄杏と夜を過ごせる。

それはまだ村で逢瀬を重ねていた時の、あの気持ちに似ていた。


だが黄杏からの返事は、“否”だった。

「えっ?」

「黄杏様におかれましては、まだ体調が戻らぬとの返事でございまして……」

必死に弁明する侍従をすり抜け、信志は夜の中、黄杏の屋敷に駆けつけた。

「信寧王様……」

久しぶりに会った黄杏は、一瞬嬉しそうな表情を見せるも、直ぐに背中を見せてしまった。

「黄杏、なぜだ。なぜ、私を拒む。」

「拒んではおりません。体調が優れないのです。」

信志は黄杏の前に、回り込んだ。

「嘘だ。もう月のモノも過ぎて、夜の相手もできるはずだ!」

困った顔をして、一歩下がる黄杏を、信志は捕まえる。
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