宮花物語
黄杏に“捨て置き下さい”と言われた信志は、公務にも身が入らない日が続いた。

それを見た忠仁が、信志の横に立つ。

「まるで、もぬけの殻みたいですな。」

「ああ……」

そう返事をする時も、心ここにあらずと言った感じだ。


「何かあったのですか?」

「ああ……」

気のない返事に、本当にあったのかなかったのか、見当がつかない。

「お話下さいませ。私と王の仲では、ございませんか。」

忠仁は、信志が幼い頃よりの、武芸の師匠であり、第1の忠臣であり、今や義理の父親だ。

「忠仁……」

「はい。」

「黄杏に、捨て置いてくれと言われた。」

忠仁は、目を丸くして信志を見た。

一国の王が、数人いる妃の一人に、拒まれたと言っても、大した事でないだろうに。

まるで、世界の終わりみたいな、顔をしているではないか。


「黄杏様はなぜ、そのような事を申されたのですか?」
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