宮花物語
一人だけ、そう黒音だけが、己の扱いを黙って受け入れているようだった。

「黒音。」

信志は、黒音を抱き寄せた。

「そのような事になっているとは、露知らず。すまなかった。」

「信寧王様……」

黒音の目には、涙が薄っすら光っていた。


「今日は私もここに泊まろう。」

信志の言葉に、一同安心した表情を見せた。

「誰か。黄杏に伝えてくれ。今夜は戻れなくなったと。」

「はい。」

黒音の女人の一人が、立ち上がった。

「理由を問われたら、黒音の屋敷の警護だと説明してくれ。」

「畏まりました。」

そして女人が黄杏の屋敷に発った後、黒音と信志は、寝所へと入った。


「お休みの中、起こしてしまい申し訳ございませんでした。」

黒音が頭を下げると、信志は黒音を背中に手を当てた。

「よいのだ。私の事よりも、そなたが怖い思いをしたであろう。さあ、私がついている上、今夜は安心して眠るがよい。」
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