宮花物語
そう言って信志は、黒音を寝台に横たわらせた。

だが信志は、灯りの側に座っているだけだ。

「……王は、横にならぬですか?」

「私の事は案ずるな。」

まだ盗賊に気を取られているのか、外をちらちらと見ていた。

それを見て黒音は、起き上がった。


「どうした?」

振り返った信志の隣に、黒音は座った。

「私も、起きています。」

「心配するな。構わずに寝ていなさい。」

「いいえ。我が主人が起きていると言うのに、隣で寝ている妃などおりません。」

顔を合わせた二人。

「私が寝ていなさいと、申したのだ。」

「これでも妃の端くれです。王のいる前で、おいそれと寝ている訳にはまいりません。」

信志は微笑んで、黒音の頬をそっと撫でた。

「黒音には負けた。」

「王……」

黒音の頬に、信志の温もりが伝わる。

「私も休む故、そなたも休みなさい。」

そして信志は、黒音の寝台に横になった。
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