宮花物語
「はい。」

嬉しそうに信志の横に眠る黒音。

だが信志は、そのまま目を閉じて、眠ってしまったようだ。

黒音にとっては、久々の夫婦一緒の夜だったと言うのに。


実はこの盗賊騒ぎも、黒音の発案。

この頃、ずっと黄杏に夜を持っていかれて、地団駄を踏んでいたのだ。


そしてそうとは知らない黄杏は、出て行った信志が、今夜戻らない事を、黒音の女人から伝えられた。

「分かりました。では、王の衣類をお願い致します。」

「畏まりました。」

綺麗に畳んだ信志の衣服を、黒音の女人に渡す事になるとは、微塵にも思っていなかった。

黒音の女人が屋敷から出て行った後、黄杏も悲しい月明かりを見ていた。

他の妃の元へ、信志が行ってしまうのは、もう慣れてしまった。

だから悲しいわけではない。

ただ、心の中がぽっかりと、空いてしまったようだ。

まだ自分には、こんな気持ちが残っているのか。

黄杏は胸に手を当てた。
< 218 / 438 >

この作品をシェア

pagetop