宮花物語
たった一度でいい。

兄・将拓に会いたい。


「この商人は、明日も宮中に来るのか?」

「はい。このところは、毎日出入りしております。何でも今週いっぱいは、いるようでございます。」

女人の情報の早さに、黄杏は目を丸くする。

「……よく知っているの。」

「ほほほっ……これがまた、目元が涼しげな良い男でございまして……」

女人は恥ずかしそうに、頬を赤らめた。


「そなたがそこまで言うなんて、珍しい。」

「それほど、いい男だったのですよ。」

黄杏は、これは使えると思った。

「……その商人に、一度会ってみたい。」

「えっ!お妃様がですか!?」

女人はひどく驚いた。


王の妃は、下々の者に顔を見せることはまずない事だし、王以外の男に会う事も滅多にない。

しかも”会いたい”と、興味を持つだなんて。


「案ずる事はない。近くで顔を見るだけじゃ。」

「は、はい……」

女人は、少しだけ胸騒ぎを覚えた。
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