宮花物語
黄杏は側にあった櫛を手に取ると、客が帰る時を待って、将拓に声をかけた。

「もし。この櫛を頂きたい。」

「は……」

黄杏の姿を見て、将拓は固まった。

「もしや……」

「お懐かしい。」

黄杏は笠から、少しだけ顔を見せた。


将拓は妹の名を呼ぶのを抑えて、黄杏が持っていた櫛を、手に取った。

「櫛でございましたら、この奥にもっと良い物がございます。ご覧になりますか?」

「ええ、ぜひ。」

黄杏と将拓は、出店の奥へと消えて行った。


そして共に付いてきた女人は、豪華な飾りの付いた手鏡に夢中になっていた。

「お妃様、これをご覧あそばせ。」

ふと顔を上げると、黄杏の姿がない。

「どうしましょう。」

オロオロと辺りを見回すと、黄杏と商人の男が、店の奥へと二人きりになっている。


「なんてこと!」

女人は、周りに気づかれないように、店の奥へと足を進めた。
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