宮花物語
「そなたなら、必ず櫛を欲しがるだろうと思って、店の一番高価な物をとっておいたのだ。これをいつも、傍らに置いてくれ。そうすればこれを見る度に、私を思い出すだろう?」

「将拓殿……」

「誰が何と言っても、この私は黄杏様の味方。一人ではありません。」

黄京と将拓は、互いの逆境を思いながら、抱き寄せ合った。


「将拓殿。ここには、いつまで?」

「明後日まででございます。」

「今度はいつ、宮中に来れるのですか?」

「さあ……何しろ、宮中に出入りできる商人は、選ばれた者のみ。こればかりは、分かりません。」

黄京と将拓は、互いに見つめ合った。

「……今生の別れになるのは、嫌です。もう一度だけ、会う事はできませんか?」

将拓は、黄杏の涙を自分の袖で拭いた。

「……また昼間に会えば、疑う者もいるでしょう。日暮れに、屋敷へ入れて頂けませんか?」

「屋敷の中に……」

黄杏は下を向いて、考えた。
< 225 / 438 >

この作品をシェア

pagetop