宮花物語
黄杏を妃にする時、”兄のいる娘を妃にはできない”という掟に悩んでいた自分に、命を捧げると言ってくれた将拓。

その忠誠心を、信志は忘れてはいなかった。

「で?どこで会う?」

「屋敷の外の門でございます。」

「分かった。今夜の護衛は、屋敷の中に偏らせよう。」

「有難うございます。」


兄妹の二人が、今度いつ会えるか分からない。

それは、信志もよく理解していた。

ほんの一時だけでも、会わせてやりたい。

心から、そう思った。


そして信志が宮中を発ち、夜を迎えた。

護衛は王の命令通り、屋敷の中に集中している。

衣類で姿を隠した黄杏は、同じように姿を隠した女人と共に、屋敷を出た。

屋敷の側には、何かあった時の為に、隠し道があった。

そこを通って、門の外に出た黄杏と女人。

護衛の姿は無く、代わりに将拓が待っていた。


「将拓殿!」

「黄杏様!」

二人は、最後の顔見せになるだろうこの時を、噛みしめるようにしがみついた。
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