宮花物語
その時だ。

「お二人とも!そこまでです!」

突然、松明の灯りが二人を照らした。

目を凝らして灯りの向こうを見ると、そこには護衛長の勇俊と数人の護衛がいた。


「なぜ……護衛長が……」

黄杏の額に、汗が滲む。

「……我々の他に、知っている者がいたのか?」

「我々の他は……」

将拓の言葉に、黄杏は後ろを振り返る。


そう。

黄杏と将拓以外に、会う事を知っているのは、信志ともう一人……

出店に付き添った女人だ。


「お、お許し下さい!!」

だがその女人が、震えながら膝をつく。

「そなた!」

「恐ろしかったのです!あまりにもお美しい二人が、夜に落ち合うなど、何かあるのではないかと!」

黄杏と将拓は、息が止まった。

何も知らない女人から見れば、自分たちは恋人たちに見えたのだ。


「ああ……」

「黄杏様。」

その場に崩れた黄杏を、将拓が支える。

二人とも、同じ事を思った。

私達は、ただの兄妹だと言えたなら。
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