宮花物語
「南方の役人で、文武両道に優れ、民からの信頼も厚いと聞いております。」

白蓮は、勇俊に背中を向けた。

「その者は、今も役人を?」

「いえ。風の噂では、突然行方不明になったとか。」

「行方不明……」

白蓮は、黄杏の隣に座る、あの商人を思い返した。


端正な顔立ち。

落ち着いた雰囲気で、聡明な感じ。

それなのに、命の危険まで冒して、妹に会いにくる人間臭さ。

分からないでもない。

あの男が役人だった頃、皆に慕われていただろうと言う事。

白蓮は、胸の前で手をぎゅっと握った。


「護衛長。一つ、頼まれ事を引き受けてはくれまいか?」

「はい。どのような事でしょう。」

白蓮はゆっくりと、後ろを振り返った。

「……あの商人の片目を、奪ってはくれぬか。」

勇俊は、恐ろしさのあまり、頭から血の気が引いた。

「なぜ……そのような事を……」

「この国の、行く末の為です。」
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