宮花物語
「恐ろしい?何が恐ろしいのです?」

白蓮のその目は、深い闇のようだった。

「奥様!」

勇俊は白蓮の手から離れ、体ごと後ろへ下がった。

「奥様の仰る通り、あの方がこの国の政治を、担う程のお人であれば!」

知らぬ間に勇俊の歯は、恐怖でカタカタと音が鳴った。

「そのような方の未来を奪うなど、一介の護衛にすぎない私には、到底できる事ではありません!」


白蓮は立ち上がると、冷たく言い放った。

「お前にできないのなら、他の者に頼むのみです。」

「えっ……」

勇俊は、直ぐに顔を上げた。

「他の者であれば、直ぐにやるでしょうね。」

「お待ちください!」

思わず勇俊は、白蓮の袖を掴んだ。

「……そこまで、あの男を?」

白蓮は、フッと軽く鼻で笑った。


「お前次第ですよ、護衛長。」

そう言うと白蓮は、袖を掴んだ勇俊の手を、振り払ってそのまま行ってしまった。
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