宮花物語
「邪魔はしないで。」

それだけを言うと、紅梅は視線を前に変えて、またじっと祈り続けた。

黄杏はそれを邪魔しないように、そっと神殿を出た。


- 必ずお子を産む -


紅梅の力強い言葉に、黄杏は自分の妃としての心構えが、甘かった事を知る。

自分は、王のお子を産む為、村からやってきたのだ。

そしてそれは、兄・将拓が自分の人生を捨ててくれたから、与えられたものなのだ。

それを黄杏は、忘れていた。

怪我をしたことも、自分に伝えない兄。

将拓の気持ちを考えると、黄杏の胸は潰れそうだった。


屋敷に戻ってきた黄杏は、実家から届いた包みを、開けてみた。

昔から村に伝わる、お子が授かると言う薬草。

それを別な包みに取り、黄杏はまた屋敷を出た。


向かった場所は、紅梅がまだ祈りを捧げている神殿。

紅梅の低いお祈りの言葉を邪魔しないように、黄杏はそっと神殿の中に入った。
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