宮花物語
信志は、黒音の隣に座った。

「懐妊だそうだな。よくやった。」

「有難うございます。」

子ができたと言うのに、黒音はやけによそよそしい。


「他人事のようだな。……何か、気に障る事でもあるのか?」

「いえ。ただ……よく考えても、この前1度来て頂いた時しか、思い当たりませんでして……なんだか、不思議な気分なのです。」

それを聞いた信志は、クスクス笑いだした。

「私もそうだ。子を授かる時と言うのは、不思議な縁があるものだな。」

信志と黒音は、お互いに子が授かった縁を、噛みしめていた。


そして黄杏のところには、青蘭が訪れていた。

「不思議なものね。次にお子ができるのは、てっきり紅梅さんだと思っていたわ。」

青蘭は、黄杏を見るとハッとして、口を覆った。

「いいえ。私もそう思っていました。このところ、王はずっと、紅梅さんのところを、お訪ねになってましたからね。」

黄杏は、至って冷静だ。
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