宮花物語
黒音は真っ白い布に、頬を摩りつけた。


「こちらは、紅梅様からのお品です。」

紅梅からの贈り物は、赤子が遊ぶ玩具だった。

「フフフッ。気が早いですこと。」

まだ大きくもなっていないお腹を撫でて、黒音は生まれてくる赤子が、この玩具を使っているところを想像した。


「こちらは、黄杏様からです。」

「お、黄杏様?」

黒音は驚いて、紅梅から貰った玩具を、落としてしまった。

「黒音様?大丈夫ですか?」

女人の桂花が、落とした玩具を拾い上げる。

「え、ええ……」

ゴクンと息を飲む黒音。


黒音はそっと、黄杏からの贈り物を開けた。

そこには、懐妊中に着るゆったりとした服に、あの薬草が入っていた。

「服?」

恐る恐る、黄杏から貰った服を手に取る。

他のお妃様は皆、産後に必要な物を贈ってくれたと言うのに、黄杏だけは、妊娠中に使う物……

もしかしたら、自分と同じように、赤子は無事生まれる事はないと、言っているのか?
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