宮花物語
しかもこの薬草。

煎じた物を黄杏も、妊娠中は毎日飲んでいた。

自分が、流産する為の薬を少量ずつ忍ばせていたのは、この煎じ茶だ。


「ひ、ひぃぃぃ……」

黒音は、その場に倒れてしまった。

「黒音様!?」

桂花が側に来て、抱き起す。

「大丈夫ですか?黒音様……」

「え、ええ……」

桂花は、黒音の目線の先に、黄杏からの贈り物がある事に気づいた。


「これを、黒音様の目の届かない場所に。」

「はい。」

桂花は他の女人に命じて、黄杏からの品物を隠してしまった。


「もう大丈夫ですよ、黒音様。」

「あ、有難う。」

「お体に障ります。さあ、寝台へ。」

桂花は黒音を、寝台へ寝かせた。

落ち着いてきた黒音をそのままにし、桂花は寝所から出ると、黒音が怖がっていた黄杏からの品物を見た。


他のお妃からの品とは別で、妊娠中に使う物。

一度お子を成した妃だからこそ、気づく品だ。

「はて?なぜこれを、黒音様は恐れるのか。」
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