宮花物語
だがその懸念は、思わぬ方向に向かう。

しばらくして、黒音は酷いつわりに、悩まされるようになった。


「大丈夫か?黒音。」

つわりの噂を聞きつけ、信寧王が昼間駆けつけてくれた。

「はい……せっかくお出で下さったのに、お相手もできずに申し訳ありません。」

「良いのだ。元気なお子を産んでおくれ。」

王は何かにつけ、黒音の元を訪ねてくるが、夜に来ることはない。

決まって明るい日中だ。

夜はまた別な妃の元で、逢瀬を楽しんでいるのだろう。

桂花は、そうにらんでいた。


「つわりが酷い時には、男の子が産まれると申しますよ。」

桂花はわざと、王に聞こえるように、黒音に言った。

「本当か?」

案の定、王は食いついてくる。

まだお子がいない状態で、男の子が産まれれば、間違いなくこの国の跡継ぎだ。

桂花が王宮に出社し、お妃の世話を受けたのも、跡継ぎを産んだ国母がまだ、誕生していないからだった。
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