宮花物語
「私の子を産んでくれるんだ。当たり前だろう。」

自分を抱き寄せて、目を見ながら微笑んでくれる王。

黒音は、何にも代えがたい幸せを、手に入れた気がした。


「そろそろ行かねば。」

王が外を見ながら、立ち上がった。

「お見送りします、王。」

黒音も立ち上がる。

「いや、そなたはよい。」

「いいえ。ただ大人しくしていただけでは、お腹の子にも障ります。」

笑顔で黒音は答え、屋敷の入り口まで、王を見送った。

「お勤め、いってらっしゃいまし。」

「ああ。直ぐに戻ってくるよ。」

王はそう言って、黒音を抱きしめてくれた。


王宮に戻って行く王を、姿が見えなくなるまで見つめる黒音。

まるで自分の方が、正妻のように思えてきた。


「ふふふ……」

黒音は、お腹を撫でながら、微笑んだ。

「そうよ、この子は男の子。この国の跡継ぎよ。私は国母になるの。」

黒音の呟きを、桂花は聞き逃さなかった。
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