宮花物語
「しかし黄杏様は、どこでこの薬草を、手に入れられたのか。」

「それが……」

女人は、黄杏が送ってきた包みを見た。

「この薬草が生えている場所は、黄杏様のご出身である、多宝村だそうです。」

「えっ!?」

「多宝村は、別名子沢山村。この薬草のお陰で、その村の女性は子宝に恵まれているのだとか。」


桂花は、考えこんでしまった。

黄杏の出身地で沢山この薬草が取れるのならば、黄杏にとってこの薬草は、秘伝であるはず。

それをわざわざ、足を引っ張りたい相手に、送るだろうか。

むしろその逆で、無事に出産してほしい。

そんな願いから、秘伝の薬草を黒音様に送ったのではないか。


ではなぜ黒音様は、その秘伝の薬草を、あんなに恐れるのか。


「桂花様……もう一つお耳に入れたい事が……」

「なに?」

女人は、桂花に近づいた。

「この薬草を調べる時、まずは他のお妃様に仕える女人達に、聞いて回ったのですが……」
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