宮花物語
信志が、白蓮を強く抱きしめた時だ。

「申し上げます。そろそろ黒音様の処置が、始まったようでございます。」

「そうか、ご苦労。」

信志が返事をした後、白蓮はまだ小刻みに震える体で、立ち上がった。

「どこへ行く?白蓮。」

「黒音の元へ……」

すると信志は、白蓮を自分の側に、座らせた。

「ここで待っていよう。」

「どうしても、黒音に聞いておかなければならない事があるのです。」

信志と白蓮は、しばらく見つめ合った。

「分かった。でもその答えを聞いたら、ここに戻ってくる事。いいね、白蓮。」

「はい。」

白蓮はもう一度立ち上がると、自分の部屋を出た。


白蓮の部屋と、処置室は同じ屋敷内にある。

処置室まで歩く間白蓮は、途方もない時間が流れているかのように思えた。

もし黒音が、自分の想像だと認めれば、堕胎の薬を使わずに済む。

苦しい事も悲しい事も、時間が流してくれるかもしれない。
< 359 / 438 >

この作品をシェア

pagetop