宮花物語
「そんな事はありません!」

叫ぶ黒音。

「確かにこのお腹の中に、王の子はいたのです!」

黒音は、大きなお腹を両手で抱えた。

「私には分かります。この中に、小さな命が宿っていたのだと。」

他に何も見えない黒音は、ずっとお腹だけを見つめていた。

「いくら正妃様と言えども、この命を侮辱する事は、私が許しません!」

白蓮は、黒音との間に、大きな壁を感じていた。


「分かりました。医師よ。」

「はい。」

そこで医師はやっと、姿を現した。

「黒音の事、お願いします。」

「は、はい。」

医師はてっきり、黒音が想像であると認め、堕胎の薬は飲まずに済むと思っていた。

「いいのですか?」

「ええ……」

白蓮は、黒音に背中を向けた。

「私は部屋にいます。何かあれば、直ぐに知らせて下さい。」

「はい……」

白蓮は、後ろ髪引かれる思いで、処置室を出た。
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