宮花物語
「医師よ。黒音はまだなのか?」

「は、はい。それがなかなか、お産の印も出てきませんでして……」

信志は、壁に拳を打ち付けた。

「王。黒音のお腹の子は死んでいるとしても、初めてお子を出産するのです。もうしばらく待ちましょう。」

信志は仕方なさそうに、廊下に出て、診察室の前にある椅子に座った。

「……もっと、簡単な事だと思っていた。」

信志は、クシャクシャと頭を掻きむしる。

「今頃は、全てが終わって、黒音と話ができるものだと、思っていた。」

その苦しみは、白蓮にだって分かる。

自分だって、こんなに時間がかかるものだと、考えもしなかった。


やがて夜になり、処置が始まって6時間経っても、黒音のお産は終わらなかった。

処置室の中からは、悲鳴に似た黒音の唸り声が聞こえてくる。

「黒音……」

信志は、その声に扉にしがみつく。
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