宮花物語
その時だった。

背中を向けていた信志が、クルッと青蘭の方を向いた。

「では、白蓮の代わりに、正妃になるか?」

「えっ?」

信志は、目をそっと開けると、青蘭に腕枕をした。


「白蓮と別れれば、そなたが正妃だ。そうすればずっと、一緒に夕食を共にできるぞ。」

青蘭は、突然の事に起き上がる。

それと一緒に、信志も起き上がる。

「どうした?私の正妃になるのは、嫌か?」

「嫌ではありません。ただ……私には、過ぎた身分でございます。」

寂しく呟く青蘭を、信志は後ろから優しく抱きしめた。

「そなたは、隣国の王の直系の姫君ではないか。白蓮は、この国の姫君だが、分家の出身だ。身分だけなら、そなたの方が上ではないか。」

「今はもう無くなった国です。それに白蓮様は、産まれてからずっと王妃なる為の教えを受けた方。私には、及びません。」

信志は、青蘭の髪をゆっくりと撫でた。
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