宮花物語
しばらくして、白蓮の部屋から出てきた信志は、紅梅の元へと足を運んだ。

「紅梅。」

「信寧王様!」

足取り軽く、紅梅は信志の前へやってきた。

「こらこら。もう、そんなふうに、はしゃいではいけないよ。」

「ふふふっ。これで最後にします。」

紅梅の顔は、緩みっぱなしだ。


「紅梅、おいで。」

「はい。」

手を広げた信志の腕の中に、紅梅は寄り添った。

「よくやった。紅梅。」

「ありがとうございます。」

ぎゅっと抱きしめる信志に、紅梅も強く抱きしめ返した。


「体調はどうだ?つわりなど、酷くないか?」

「はい。黄杏さんの時は、つわりが酷いと聞いたのですけど、私は何もなくて。まだ、早いのでしょうか。」

「ないのなら、その方がよい。見ているこちらも、辛くなるからね。」

そして改めて、紅梅と顔を見合わせた信志。

「……本当によかった。紅梅の元に、赤子がきてくれて。」
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