宮花物語
「王……そんなにも、私の事を考えて下さっていたのですか?」

「ああ。そなたは人一倍、子を産む事に熱心だったからね。思い出すよ。そなたを、妃として迎えた日の事を。」


武道の大会で、決勝に進んだ紅梅。

最後の相手は、誰でもない信志だった。

『それにしても、女であるそなたが、私の相手とは……誉めてつかわす。』

『有難うございます。』

女隊長を務めていた紅梅。

ここで王に勝てば、どうなるかは立場上、分かっているはずだ。

『このまま試合をしても、そなたはわざと私に負けるであろう。』

『えっ?』

顔を歪ませた紅梅。

『どうだ?私に勝ったら、そなたの願いを一つ叶えてやる。何がほしい?』

どうせ絹の衣服や、髪飾りと答えるだろうと思っていた。

だが、紅梅から出た言葉は、違うものだった。


『王の……お妃にしてください。』

『えっ?』

あまりの願い事に、周りはざわついた。
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