宮花物語
『私なら、必ずや王の子に相応しい、強い御子を産んで差し上げます。』

その真っすぐな瞳に、信志も狼狽えた。

『……いいだろう。私に勝ったら、そなたを妃にしてやる。』

もちろん、信志とて本気ではなかった。

女相手に、本気で戦うなど、有り得なかったからだ。


『では、行きます!』

だが、長刀を持った紅梅は、意外に強かった。

『ぐぅぅうううう!』

思いの他、後ろへ飛ばされた信志。

『はぁあああああ!』

尚も、紅梅の攻撃は続く。


『ああ……王相手に、あそこまで!』

見ている誰もが、紅梅はこの試合に勝っても、打ち首にされると思っていた。

『はははははっ!』

紅梅の攻撃を受けた信志は、高らかに笑った。

『私の負けだ、紅梅。』

『えっ?』

『そなたを、私の妃に迎えよう。』

信志の一言で試合は終わり、しかも新しい妃まで、決まってしまった。

慌てたのは、紅梅の父である忠仁だ。
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