宮花物語
『それは、誠ですか?』

小さい頃から信志に仕えてきた忠仁にとって、今ここは、運命の分かれ道だ。

『ああ。私の妃になって、強い御子を産んでくれ。』

そう言われた紅梅は、誰よりも明るい表情をしていた。


「あの時は、このような日が来るとは、正直思っていなかった。」

「まあ。」

信志と紅梅は、手を取り合って、見つめ合った。

「……紅梅。強い子を産んでくれ。」

「はい!」

そして信志は、紅梅の隣に座った。


「それにしても、この機会によく懐妊したものだ。」

信志はまだ、紅梅に子ができた事が、信じられなかった。

「それは……」

紅梅は、言おうか迷ったが、黄杏の微笑む顔を思い浮かべると、重い口を開いた。

「黄杏さんが、懐妊しやすい薬草を、分けて下さったおかげです。」

「黄杏が?」

信志は、驚いた。

お妃同士、表面上の付き合いはあったとしても、相手に子ができやすい薬を送るなんて。
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