宮花物語
そして黄杏が宮殿に来てからは、もっと遠くに行ってしまったと。

もう自分の元へは、来てくれないのだと思っていた。

だが今は、一番欲しかった王の愛情が、何より近くにある。


「王……私は、幸せです。」

「そうか?これからもっと、幸せな暮らしが待っているぞ。私と紅梅と、産まれてくる御子との暮らしがな。」

「はい……」

それでもどこか、この幸せは一時的なものだと、感じていた紅梅。

だが不思議な事に信志の愛情は、紅梅が思う以上に、続く事になった。

お腹に子が宿り、半年が経つと言うのに、信志は毎晩欠かさず、紅梅の元を訪れていたのだ。

「今日も、私の子は健やかか?」

夜になると必ず寝台で、紅梅の大きくなったお腹を、信志は愛おしそうに摩った。

「もう少しで7か月になるのか。産まれてくるのが、楽しみだな。」

時には、耳をお腹につける事もあった。

「ああ。動いている、動いている。紅梅に似て、元気な子だ。」
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