宮花物語
信志は、黄杏の手を強く握った。

「まあ、こればかりは、産まれてみなければ、分からぬがのう。」

そして産婆が見守る中、夜中を通して黄杏は、ウトウトと眠ったかと思うと、痛みに唸り、治まったかと思うと、またウトウト眠りだした。

その度に信志は体を起こし、黄杏の腰を摩った。


夜明け頃になり、痛みが襲ってくる感覚が、早くなってくる。

「さあて。そろそろお産みなさるか?」

産婆は王を、黄杏から引き離した。

「ここから王は、外で待っていて貰えるかのう。」

「ここまで来てか?」

信志は、産婆に詰め寄った。

「最後まで、見届ける事はできぬのか?」

「できませぬ。子を産むのは、女の命を懸けた大仕事じゃ。男は、何もできぬが常よ。」

そう言われると、信志は何も言えず、診療所から出ていった。

「さあ、黄杏様。今度痛みがきたら、気張りんさいよ。女人達!布と産湯を用意しておきんさい!」

夜明け近く、診療所はバタバタと、騒ぎ始めた。
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