宮花物語
忠仁と将拓が、泣きながら抱き合っている頃。

産まれたばかりの皇子を、信志は飽きる事なく眺め続けた。

「可愛いのう……」

まだ生まれたばかりで、肌は赤く、手も小さい。

「そう言えば、明梅が産まれた時よりも、大きいな。皇子だからか。」

何を見ても、信志と黄杏にとっては、至福に感じる。


「名前は決まりましたか?」

黄杏は、信志を見ながら尋ねた。

「ああ。光仁と名付けようと思う。」

「光仁?」

「ああ。仁は、”思いやり”と言う意味もある。光は、そなたが御子を産む時、光が見えると言っただろう?」

黄杏は、信志と顔を合わせた。

「嬉しい……聞いて下さっていたのですね。」

「聞き逃すものか。新しい時代の幕開けを……」

黄杏と信志は、新しく生まれた光仁を交えて、お互いを抱きしめ合った。


その後、皇子の誕生は国中を駆け巡り、もちろん黄杏と将拓の故郷、多宝村にも知らせがやってきた。
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