宮花物語
「青蘭は、敵国の姫だったんだ。宮殿を攻め落とした時にね。父である王は死に、皇太子であった兄を、火の海の中、探していたんだ。」

思わず黄杏は、口許を手で覆った。

「それが何とも、痛ましくてね。国へ連れて帰った。もちろん、略奪だとかそんな事ではない。どこか儚げだった青蘭を、私は……」

そこで信志は、言葉に詰まってしまった。

「愛しているのですね、青蘭様の事を。」

本心をつかれて、信志は項垂れた。

「すまない。」

「どうして、謝るのですか。今まで一度も愛した人はいないなんて、そんな王でしたら、私は惚れたりなどしませんでした。」

顔を上げた信志は、微笑みながら、黄杏の髪を撫でた。


「他には?」

「ははは、他にか。実はもう一人いる。」

「もう一人だけですか?」

「ああ、一人だ。紅梅と言ってな。あの忠仁の娘だ。」

「忠仁殿の?」

二人で後ろを振り返ると、忠仁は気むずかしい顔をしている。
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