キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


お世辞かもしれないけれど、隼人くんの人柄を考慮するともしかしたら本音かもしれないという微かな希望も捨てきれない。



「ゆりはなにが好きなの?」

「へっ?」

「食べ物とか、スポーツとか」



一旦考えていたことを奥に押しやって、聞かれたことについて考える。


好きなもの……?



「チョコ、かな……運動は得意じゃないんだ」

「チョコか」

「うん」

「嫌いな食べ物は?」

「……玉ねぎ」

「え⁉︎なんで⁉︎美味しいのに……!」



なんでもない会話。だけど私はずっとこんななんでもない会話がしたかったんだと、深く実感する。



「サラダとかに入ってる生の玉ねぎが苦手で……」

「あー、好きだけど、なんとなくわかるかも」



笑って、誰かと話したかった。一方的な悪口じゃなくて。こんな風に、楽しく。



「ゆりは料理する?」

「え?」

「ゆりの手料理食べてみたいかも」



料理は、お手伝い程度にしかしたことないな……。


うまく振る舞えるかわからないけれど、隼人くんからのリクエストとなると、叶えてあげたくなる。こんな私でよければ。


そうなると、もっとお母さんにちゃんと料理を教わっておけばよかった。やっぱり親不孝な娘だよね、私って。ろくにおふくろの味ってやつも習得せずに、先に死んでしまった。



「……今度お弁当作ってくるね」

「まじ⁉︎」

「うん、頑張るね」



ねぇ、恋がいまからでも遅くないのなら、料理も、いまからでも遅くないのかな。


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