キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
笑うのをこらえた隼人くんがまた挨拶を返してくれた。なんだか私も可笑しくなってしまって、口角を上げて肩を震わせた。
あと何回、きみに「おはよう」と言えるのだろう。
考えてはいけない領域に踏み込みそうになって、躊躇した。そしてそのまま思考を頑張って停止させる。考えては、いけない。きっと悲しくなるから。
「今日はなんの手品をしよっか」
「なんでもいい」
それは適当な答えではなく、それが的確であった。
隼人くんがいれば、なんでもいい。なんでも嬉しいし、幸せなのだ。
きっと隼人くんにはわかってもらえないかもしれないが、それが明確な答え。
「隼人くんにリクエストしたら、なんでもしてくれそう」
「なんでもは無理だよ。僕もまだまだだから、できる手品も限られてるんだ」
「そうなんだ。誰か、先生みたいな人はいるの?」
「いるよ。僕のおじいちゃん」
「おじいちゃん?」
ふわっと優しく笑って、隼人くんはフェンスの柵に肘を置いた。
私も移動して隼人くんの隣に立つ。
風はほのかにあり、自然の緑の匂いを運んできている。
「うん。僕のおじいちゃんすごいマジシャンなんだ。もう引退しちゃったけど……」
「おじいちゃんのこと、大好きなんだね」
「大好きなんて言葉じゃ足りないよ。尊敬してる。僕もいつかおじいちゃんみたいなすごいマジシャンになりたいんだ」
「すごいマジシャン?」