キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


差し出されたのは、チョコレートだった。



「これは私たちの記念すべき初めての旅なんだから、楽しく行こう」

「え?」

「うふふ」



落ち込んでいた顔を一変させて、理香子ちゃんが笑う。

……なんて強い人なんだろう。関心しちゃう。



「ありがとう」



貰ったチョコレートは、甘くて、すぐ口の中で溶けてなくなった。
するとかばんの中からまた違うお菓子を取り出した理香子ちゃんの準備の良さに笑いがこみ上げる。


楽しむ気満々だったのが、伝わってくる。


それでもその心の裏には不安があるんだろうなって思うと、私が暗い顔していられない。一番心配しているのは、気丈に振る舞っている理香子ちゃんなのだから。


遠慮なくお菓子を頂き、ふたりで笑って、二時間の電車の道のりを過ごした。途中の乗り換えも、慣れない土地に慌てたが、なんとか遂行することができた。


ようやくたどり着いた最寄駅。改札を抜けて、コンクリートの道へ出た。
マンションやコンビニ、やや高い建物が並んでいるこの街並みは見慣れていたはずなのに、少しだけ懐かしい。まだ、三日しか経っていないのに。


そして、少しずつ学校へ近づくにつれて、私の心も落ち着かなくなっていった。



「大丈夫?」

「うん、平気……」



学校手前の信号が青に変わるのを待っていると、顔を覗き込んできた理香子ちゃんと目が合う。


大丈夫。大丈夫。


言い聞かせていないと、動悸と目眩で倒れてしまいそう。


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