烏丸陽佑のユウウツ
ちゃんと念押ししておこう。
「散々冷たいメールをした。俺自身俺の中にあるこの気持ちをどうしたらいいのか解らなくなったんだ。だけど、梨薫ちゃんが、ちゃんと決めた事で、...俺の気持ちも行き場が出来た気がする。行き場というか、収める事が出来ると、思う。俺は...狡くて、楽しい方を選んだって事かな。
これからもまだ、店に来れると思ったら、また、いつでも来てくれ。だけど、そうそう困る事も、そうだな...そもそも部長さんに話せなくて、俺に話しているようでは駄目だから、もう、そんなに来ることも無くなるのかな。...そうだな」
そうして、足が遠退いていくもんかも知れない。...それでいい。
遠目にマンションが見えてきた。駐車場の端に停まっている車のマフラーから、白い水蒸気のような物が出ているのが見えた。
「陽佑さん、私...」
「...梨薫ちゃん、携帯とか鳴ってなかったか?」
「え?」
不意の呼び掛けに急いでポケットから手を出し、小さなバッグを持ち直すと手を入れた。携帯を見ていた。
「...着信があります」
そうだろうな。
姿を確認したのだろう、車のドアが開いた。足が出て姿を見せた。
部長さんだ。下りて何かを持った手を振っていた。
「梨薫~、鍵~。探しただろ。車の中に落ちていた」
梨薫ちゃんは部長さんの元へ走った。多分、ちょっとでも早く、俺と少しでも距離を離す為にだ。
「すみません。そうじゃないかと思ったんですけど、...携帯、電源を切っていて。すみませんでした」
「いや、寒かっただろ。こんな時間だし」
「...大丈夫です」
「烏丸さんは何故?」
梨薫ちゃんの手を取り、寒いだろと肩を摩りながら抱き、視線は俺に向けられた。