烏丸陽佑のユウウツ
「黒埼君、度々悪かったな。お客様なのに」
「あ、いいえ。陽佑さんは仕事中なんですから。呼ばれたら行くのが当たり前です。また聞こえちゃったんですけど…静かに恐い人って…目茶苦茶恐いタイプじゃないですか…」
「ん?あぁ、聞こえた?…そうだな。それも普段は解らない面だ。穏やかで人当たりは柔らかい奴だからな。…だからいざとなったら本当恐いぞ?」
「陽佑さんと同じくらい?」
「俺?フ…それはほぼ見た目で言ってるだろ。じゃあ怒らせてみるか?」
「いや、いやいや遠慮します…止めておきます。触らぬ何とかと言いますから。わざわざ寝た子を起こすような事をしなくても、です」
「ハハハ。俺は全然、大した事ないから」
…ハハハ。自己申告なんて信じられるかよ…。陽佑さんだって、こういった商売をしてるんだから、血がたぎる時だってあるだろ…桑原桑原…。
「ただ、好き、ってさ…それでいいと思ったら特に相手の詳しい事、知らなくていいじゃない、だからあれこれ聞かない」
「え?まあ、そうですね」
根掘り葉掘り聞く方がどうかと思う。聞くとしても自然の流れでだろう。
「だけど、知らないから困る事もある。一つ疑問に思う事が出来た時、自分の知らない女性が彼と一緒に居たとしよう。そのままにしてしまうと勝手に思い込んで不安になる…疑心は増すばかりだ。でも、問い質す行為は信じて無いと思われてしまうかも知れないし、自分だって相手を信じられないのかと…結局は負のスパイラルだな。そんな時、いい方には決して考えないからな」
「ゔ〜ん。聞かない事で信じてると思いたい気持ちと、聞かなきゃ解らない事実と…どうするかは性格になってしまうんですかね、最後は」
「好き過ぎるって事も、素直になる邪魔をする事にもなる…場合もある。相手が聞かれたくないと思っているかも知れない、それをしつこく聞いて、信じられないのか、終わりにしよう、って言われるのが恐い…」
「何も出来なくなる…臆病になるって事ですね」
「それで駄目になったんだよ」
「あ、…」
そうなのか…言いたい事を言って、言い合って解決する事は出来なかった。喧嘩になるかも知れない事は、したくなかったのかな。理解ある人だと思われて居たかったのか…。
「知らない一緒に居た女性…一方的に好意があったのはその相手の女性の方だった。ま、別れた理由は二人にしか解らない事だ」