烏丸陽佑のユウウツ
「力が抜けたというか、今なら二人、いい感じに、自然に見えましたけど」
「…そうだな。まぁ、そこが、上手くいかないのが、紫ちゃんの理屈っぽいところかな。素直じゃない、なれない性格…。あー、ゆかりちゃんて言うんだよ彼女。彼女は昔…妻帯者と知らされずにつき合っていた男が居たんだ…それが、まあ、偶然奥さんらしい人と居るところに出くわした。解って自分から即終わらせて…ここで酔ってつぶれた。その時、隣に居合わせていたのが、あの元彼だ」
「あの…言い方は悪いですが、ここで会ったとなると、お持ち帰りってやつですか」
「ん゙ー、言ってしまえばそうなんだけど、弱ってるいい女を一晩だけ狙った、とかでは無い、かな…。一目惚れは一目惚れだったらしいが。何としても連れて帰って、連絡先だとか知って、つき合いたかったみたいだ」
まぁ、紫さんて人は綺麗な人だったな…。そんな人が一人で酔い潰れていたら…。
「この出会いを逃したくなかった、って事かな…」
「そうですね…」
巡ってきた好機、って事か…。幸運なのか。縁なのか。…今もまだ、…縁は続いてる。
「黒埼君もさ…」
「あ…はい?」
「俺の店に来てる間に、何か、こう、劇的な出会いとかに出くわしちゃうかもよ?」
「あ、また〜。そうやって梨薫さんから目を背けさせようとしてるでしょ」
「今のは、そんなつもりでは言ってないぞ?あのさ、グラスと俺ばっかり見てないでさ、少しは周りの視線も感じてみたらって、意味も込めてだよ」
…ん?言われて何となく横を見れば、二つ先の席でこっちを見ている女性と目が合った。女性は慌てて直ぐ視線を逸らせた。陽佑さんが相手をしてないって事は…、陽佑さん狙いで来てるとか、そんな軽い立ち寄り方とは違うのか…。
「な?あの子…向こうには興味を持たれてるって事だ」
それはまさに今夜が偶然の出会いって事か…。俺は常連客ではない、まだ来始めたばかりだ。向こうにしても、次、会うかどうかは解らない、会えたらそれが運命だって思うのかな。
「確かに可愛らしい人ですが…それだけです。他に…特に何かくるモノは無いです」
「フ。あ〜あ…勿体無い。どんだけ梨薫ちゃんに惚れてんのかね〜」
「…ちょっとやそっとでは変わりませんよ。そんな…浅い思いじゃないです。している事は軽く見られてしまってますが…」
「いつもああなのか?」
「え?」