烏丸陽佑のユウウツ
素直に返事をして中に入った。
…本当…突拍子もない事をする子だ。何を感じたくて、また来たんだか…。思いついてからかいに来たのか?
着替えを済ませ、一緒に外に出て歩いた。
「…こんな時間にうろついたりして…また眠れなくなるぞ?」
「…失敗だった?」
はぁ…、いい加減…話すのが嫌になってくるよ…。聞こえてないのか?聞こえてるだろ?まず人の話に言葉を返せよ…ふぅぅ…。
「…何をどう言ったらいいか解らんな。…もう、試さなくていいって言ったと思うが…。言ったばっかりだぞ」
「だから、今日はもう無いって、気を抜いてるかなと思って」
ゲーム感覚かよ。だったら忘れた頃に日を改めろよな。ただの脅かしあいじゃないか。
「あのなぁ……はぁ。だとしてもだ。その考え方、可笑しくないか?それはどっきりとかする為の考え方だろ。抱き着き方だって…、あれでは驚かせただけに過ぎない。大体…」
「大体、何?」
「あ?…大体、…抱きしめてドキドキするかなんて、まず雰囲気からが大事だろ?そういうもんだろ。せめて、ゆっくりじわっと抱き着いて来い」
「……そうだった。へへ」
へへってな……はぁ。益々何がしたかったか解らなくなるだろ。こうなったらもう完全に遊びだ遊び。人の気を弄んだ遊びだ。
「そうだろ」
並んで歩いていた梨薫ちゃんの足が止まった。
「あ、おい…何だ、どうした」
少し後ろになった梨薫ちゃんの顔を見た。特に変わった様子もない。だけど動こうとしない。どうした。何を考えてる。…情緒不安定にでもなってるのか?……女の子の日か?…それは…セクハラか。
「どうした?ん?」
「…何もかもゆっくりと…こんな風にまず見つめて…それから…近付いて。ゆっくり腕を差し込んだら?…」
言いながら、ゆっくりと近付いて来た。顔の近くで…ふわっと髪の香りがした。
差し込まれた腕にゆっくりと少し力が入って俺の胸に顔を付けた。…お。
「…陽佑さん…腕を回してみて?…」
言われるがまま腕を背中に回し、言われてないのに強く抱きしめた。頭を掴みもっと胸に押し付けた。抱き込むように抱いた。
「俺はドキドキしてる…いつもだ」
頭に手を置いた。撫でた。聞かれても無いのにドキドキしてるって答えた。これって…何とも言えない雰囲気だな…はぁ、出来る事なら…このまま俺の部屋に連れて帰りたいところだ…。
暫く抱いていた気もするが、梨薫ちゃんは何も言わない…抱き着いたまま動かなかった。
焦れた訳では無いが、これ以上、このままで居ても仕方ない…もう…いいだろ。仕掛けて来たのはそっちだろ?何か反応しろよ。俺はドキドキしてるってとうに言っただろ。
「…もういいか?梨薫ちゃんはどうだとか、俺はもう聞かないから。だから、もうこんな事はするな。…さぁ、もう帰るぞ。明日仕事があるだろ。連日朝帰りなんかして、睡眠不足で目眩でも起こしたら大変だ」
背中の腕を外させ身体を離した。体調の心配なんかしたら、また、親みたいだって思ったか…。