烏丸陽佑のユウウツ
返事も無いまま、黙って歩き始めた。…はぁ、何を考えているのやら…さっぱりだ。
結局、俺から話し掛ける事もせず、着くまで一言も喋らなかった。
「鍵はあるな?持ってるか?」
「…大丈夫です、ちゃんとあります」
「じゃあ、おやすみ。…上がって?」
「…はい…おやすみなさい…」
建物の中にゆっくり入り、エレベーターに乗る姿を見送った。
さて、帰るか。…ん……何だか…こんなに後ろ髪を引かれるおやすみは無いかも知れない。している事の意図がはっきり解らないから、俺一人で盛り上がってもしようがないんだけどな…。帰してしまったよ。
抱き着いて、確かめて…無いなと思ったら、今度こそ部長さんに言うつもりなのか。…そうかも知れないな。少しでも自分の中に引っ掛かるモノがあるとするなら、今後、惑う元にならないようにする為にか…。それを確かめたかった。きっとそうなのかも知れない。だから何も言わなかった…。んー。
言わなくていいとは言ったが…ドキドキしたのかしなかったのか…、それも、結局言わなかった。何なんだ…どうしろって言うんだ。…気はあるのかないのか。
…不思議な子だ。いつまでも掴みきれないというか…居ると振り回されてるようで大変は大変だけどな。まだ見せてない不思議な部分てあるのか…。一々説明が足りないから、本当…やることなすこと驚かされると言うか、掴みきれない事ばかりだ。
俺っていうのは…見守る役目で居ろって事かな…。
ブー。おっ。…びっくりしたぁ。…はぁ……小動物なら俺はもうとっくに死んでるな…。一日で何回驚いたか…。心拍数があがるっつうの。殺す気か…。
…梨薫ちゃん、か。どうしたんだ。
【陽佑さんは聞かないって言ったけど、私はドキドキしました。鍵、解らないって、言えば良かったです】
ん……どういう事だ。鍵はまた無いのか、いや、この言い方だと、あるんだよな。…無いって事が言えなかったって事なのか?違うよな…はぁ。俺はもう…、色々なパターンを考え過ぎて、内容がまともに読み取れないんだ。こんな含みがあるような文章…解らないよ、梨薫ちゃん。
【どうなんだ。部屋には入れたのか?入れたから、わざと困らせようと言ってるんだよな?】
自分でもこんな返し方は不粋だと思った。気になるなら、メールなんか返してないで、先に駆け出せ、って…ブー、あ。
【入れてます。でも入れてないです】
はぁ…何だ?また。どういう意味だ。踵はとうに返していた。マンションへ走っていた。これは謎掛けみたいなもんじゃないか。…解り辛いな、…本当に。正解は梨薫ちゃんの中にあるって事か。試されてるのか。
はぁ、…はぁ、…ゴホッ、はぁ。マンションに着いた。
エレベーターに乗った。