烏丸陽佑のユウウツ


ブー、ブー、…。…ん、誰だ?………梨薫ちゃんじゃないか。
…何、…本当か。

「すみません、ちょっと失礼します」

相手をしていたお客さんに断りを入れて、俺は店の裏に行った。


ドアを開けたら梨薫ちゃんが立っていた。本当に居た。

「梨薫ちゃん…」

「…部屋に入れなくて」

ん?黒埼君にはまだ連絡してないのか、どうした…これは…どういうつもりで言ってるんだ。どういうつもりでこっちに来たんだ。

「…まあ、入れよ」

「…はい、ごめんなさい、…忙しいのに」

まだ連絡してないって事か…。それとも、もう鍵は受け取って来たのか…。
なら、部屋に入れないってのは嘘か。…違うな。受け取っていたら、黒埼君の事だ、俺、会いましたからと、嬉々として直ぐ連絡して来ているだろう。じゃあこの、部屋に入れないと言う訪問は何だ…。

「あ…取り敢えず、部屋に居るか。店が終わるまで」

「はい。…あの、陽佑さん、…私…」

「何だ?今は詳しく聞いていられる時間がないんだ。後で聞くから、いいか?」

訳が解らない事への苛立ちも少しあった…。いいように気分で振り回された感だ。客も待たせている。いつもと変わらない。ぶっきら棒に言葉を返した。

「あ…はい、解りました。忙しいのにごめんなさい…」

「いや、いつもみたいに、まあ、適当に楽にして居たらいいよ」

「…はい」

…。


店内に戻った。どういうつもりだ。…何故、部屋に入れないなんて言う…。黒埼君に連絡をしたらいいじゃないか。知ってるんだろ?鍵は黒埼君が持ってること。
俺も…こっちに梨薫ちゃんが来てるって、まだ黒埼君に連絡してないが…。
晩飯は食ったのかな。いや、一々…また、そんな事を聞くのも…もう止めた方がいいのかもな…。いい加減鬱陶しいだろ。大人なんだ、干渉せず、どんな事ももう放っておけばいい。


はぁ、やっと終わった…。腕時計を見た。…もうこんな時間じゃ、今更黒埼君に連絡して鍵って言うのも、梨薫ちゃんもし辛くなったかもな。それとも、待ってる間にもう連絡はしたかも知れないか。ま、場合によっちゃ、ここに泊まればいいんだし。一晩の事なら困りはしないだろ。

コンコン。

「梨薫ちゃん?…入るぞ?」

返事がないから寝ちゃったのか。ドアをソロッと開けた。……お、あれ、居ない…。明かりは点けっぱなしだ。トイレか?

【どこに居る。どこに行ったんだ】

…。

メールの返事はまた返って来ない、か。んー、どこかに行ったのか…いつ居なくなったんだ。コンビニか?……違うな。はぁ、どこに行ったんだ。部屋に帰ったのか?はぁ、もう、黙って居なくなるとか、いい加減にしてくれよ。
裏の鍵だって開けっ放しになってる訳だし。いくらなんでも、そこら辺、無責任だぞ。
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