烏丸陽佑のユウウツ
【何か連絡はなかったか?】
今更だが、黒埼君に連絡してみた。起きてるかな…こんな時間。起きてるよな、絶対。梨薫ちゃんからいつ連絡が来るか待ってるんだから。
ブー。来た。
【はぁ、梨薫さんかと思ったじゃないですか。どうしたんですか?こんな時間に】
そうだよな、変に怪しいよな、…正直に言うか。
【俺の店に来たんだ。もっと、まだ早い時間に。だけど、待たせていた部屋から黙って居なくなったんだ。連絡しても返事がない。部屋に入れないと言ってたからどうしたのかと思ってだ】
【来てたって…ちょっと待ってください。俺のところに連絡は来てないんです。だから鍵は梨薫さんの手元にまだないんですよ】
…じゃあ、どこに行ったんだ。
【来た時、どうして直ぐ連絡してくれなかったんですか。梨薫さんが…俺に連絡したくなかったにせよ、何にせよ、店に居る時に、直ぐそこに鍵を持って行けてたじゃないですか。少しくらいは居たんでしょ?
俺に鍵を持って来させるから居ろって言っても良かったじゃないですか】
そうだよな、その通りだ、すまん。ちょっとだけ…腑に落ちない、疑いの気持ちと、狡い気持ちが働いたんだ。
黒埼君に連絡もせず、鍵を受け取りもせず、先に俺のところに来た事が、どこか妙に連絡を遅らせたんだよ…。
【…まぁ、持って行きませんけどね】
…ん?…だよな。黒埼君が別で会うようにするよな。
ブー、あ、梨薫ちゃんだ。
【黙って居なくなってごめんなさい。部屋に帰ってます。心配はしないでください】
…は?嘘だろ?どういう意味だ。ないんだろ?鍵。どうやって入った。オチは…合い鍵でも持っていたって、そんな事か?それとも開いてたままだったのか?
【嘘じゃないだろうな、本当なのか?】
【はい。開いてましたから】
……はぁあ?開いてた?
【おい、鍵を抜く時、かかっているかどうか、確かめたのか?】
黒埼君にメールした。
【え?あ、それは、抜き取ったから】
じゃあ、どっちか確認はしてなかった、鍵はかかってなかったって事か…。そうなるよな。
【梨薫ちゃん、部屋に帰ったってさ。今、連絡があった。これは本当に今だ】
【あ、いやー、…参ったな…。何だ、じゃあ開いてたのか】
【はぁ、しっかりしてくれ。留守中に、泥棒でも入っていたかも知れないだろ】
【すみません。あ、梨薫さんからメールが来ました】
鍵は会社でって、事か。
【無事部屋に入った、鍵は会社で返して貰うから、明日も休むからまだ持っててって、事です】
…そうか。
【取り敢えず、一段落だな。おやすみ】
黙って出ていって、帰ってる…。ただ良かった、では済ませられない。最初から謎ばかりの行動を取って…。
【はい、おやすみなさい】
店に鍵をかけ、俺は走った。…まただな。また心拍数が上がる。