烏丸陽佑のユウウツ
責任者が急に休んで悪いとは思ったが、従業員に休む連絡をした。
ふぅ。…ん゙ー。……はぁぁ。
プツンと切れてしまった。これでは何もできない。
取るものも取り敢えず、車に乗り別荘に来た。着くなり海に出ていた。
んー、思えば…、最初の鍵の時、入れたけど入れてない、とか、の時だ。無事なのか、そればかりに気を取られて、抱きしめられてドキドキした、という部分、見ていたはずなのに、疎かにしてしまった。…はぁ。
あのタイミングでそっちの言葉に反応して、何かを言っておかなきゃ駄目じゃないか…はぁ、もう…、何してたんだか…。梨薫ちゃんも悪いんだぞ。解り辛いメールなんかして来て…。
……勘も鈍ってるし。もう、この思い、完全に引くにはいい潮時なのかも知れないなぁ。て、海に来てるからって……寒。元々が脈がありそうなモノでもなかった訳だし。
黒埼君という男が現れた時点で終わっていた事かもな…。そんな潮時も感じ取れなくなっていたとは…鈍いおっさんだな、…全く。そうだ、感覚が鋭敏ではなくなってしまったんだな……。
梨薫ちゃんは梨薫ちゃんで、たまたま見た夢を気にして、もしかしたらを確かめただけの事だったんだ。
ドキドキしたと言ってはいても、そこに、“好きだから”は付いてなかったじゃないか。所詮、物理的なモノだ。俺がドキドキしてると言ったから、私も、と、言ったくらいの事だ。
もう試すなとか、遊んでるのか、とか、心ない、酷い事も言った。俺の方から突き放してしまったんだから仕方ない。もし…いや、もう考えても時間は戻らない。
何があろうが無かろうが、あの部屋に居た黒埼君は、心配したと言って抱きしめただろう。そして、今日は梨薫ちゃんは休むらしいから、ゆっくり二人で過ごすだろう。中途半端な時間だから、また寝かせて欲しいと言っただろう。そして、多分、泊めた…。それにもう障害はないだろう。普通に泊めるよ…。
そもそもなんだ。誰かを好きなら、違う人間を泊めたりしてはいけない、…有り得ない事だ。しかも男をだ。そこから考えても、俺の事は、ないんだ…。あ゙ー。うじうじうじうじ思ってるなら、乗り込んで行けばいいじゃないか、それが気持ちの表現だろうが。…はぁ。そんな野暮な事は今更…。黒埼君が部屋に居た事で、すごすご帰って来てしまったじゃないか…本当にもう…あ゙ー…、あ゙ーーー。自信ありげな、男の顔さえしていた。
俺は大人の狡さも使えず、だったら…、と言っても、無鉄砲にもなれず。んな゙ー…本当、情けないの極みだな………。
「海は黄昏れる場所なの?」
…あ゛?…母さん。
「…何」