烏丸陽佑のユウウツ
梨薫ちゃんだって、ドキドキしたというのが、多少なりとも好きからのモノなら、解かりづらい行動をしていないで、自分から俺に何か言ってくれればいいじゃないか。…その気があるなら、何もしなかった俺に、馬鹿って言えば、それで気持ちは解るんだ。そういう気持ちを俺に持ってるならだけどな…。
俺は…梨薫ちゃんのマンションで二人を目の当たりにして、引いて、帰って来たんだ。深い関係性が無いにしても、ああいうのは目にするもんじゃない。俺は引き下がった。もうそういう態度を取ったんだから。
普通、あんな風にあんな時間に二人で部屋に居る関係ならって、こっちは思うんだ。そういうもんだろ?
黒埼君は正直だから、何もなかったとわざわざ言ったし、それが嘘だとも思わない。何かあったと言う事はあっても、何もないと嘘をつく必要はないからだ。…だけどな。…解からなくなるよ。弟に持つような感覚だと聞いていても、その日困ってもいない男を泊めるという事…。何度もだ。
『何故居なくなってたんだ。仕事が終わってから、ゆっくり落ち着いて話そうとしてたのに』と、あれからだって伝える事は出来た。だけど、未だにそれもしていない。それが俺の答えじゃないのかな。夢の話を聞いた時もそうだった。自分に向かせたいと本気で思っているなら、いつまでも呑気にしてるのは可笑しいんだよ。好きだと言っている黒埼君も部長さんも居るっていうのに。
俺らの関係性は、バーの店主と客というのが、一番しっくりして楽しいのかも知れないな。それが、擬似恋愛というか、それで会話を楽しんで、たまに行き過ぎる心配をして…。フ。ずっとそうだった。もしかしたら…好きだとか、それを恋だとか、毎回、何かしら楽しみになって、俺がずっと勘違いしていたのかも知れない…。店主と客なのに、男と女だから。
黒埼君が梨薫ちゃんのところに行く、泊まる、と、面と向かって聞いても、そんな事させるかと言いもしない。阻止しようと押しかける事もしない。やっぱりどこかで大丈夫だと思っている。
それは、黒埼君だからと、何もありはしないと、高を括っているからか。そうだとしたら、馬鹿にした、失礼な話だが。思って無いとも言い切れない。はぁ、何もかも考える事が矛盾しているな。
あんなに、抱きしめただの、キスしただの聞いて、苛ついていたのに。…苛つく?それは…親しくしている女性の事だから、自分のものを取られたような気になるからだ、多分。そうだ。今更だが、俺の気持ちは何物なんだ…。