烏丸陽佑のユウウツ
携帯に特に連絡は入ってなかった。週明けだし、店はそれ程忙しいという事もないだろう。
【特に変わった事はないか?明日の夜には出るから】
【特に何もありません。解りました】
…ふぅ。来てはみたものの、…まあ、…ぼーっとしとくか。
休み慣れしてないというか、仕事をしながらバランスを取っていたところがあったから…。時間の使い方が下手だよな。やる事がなくて持て余すのは当たり前だ。まあ…予定があって休みを取った訳じゃなし。
少し冷たくなった潮風に吹かれ、ベランダで酒を飲み、空を見上げ星を眺めた。昼間寝たし、ベッドに入ったからといって、眠れるとも思わなかったから、何となく日が変わるまで起きていて横になった。
ブー、ブー、…。ん゙。…はぁ。…誰だ。…フ、黒埼君か。はぁ……朝から何だ。
【何してるんです、どこに居るんです】
フ…、何だ、どうしたんだよ。
【何もしてない】
【大変なんです】
【何がだ】
ブー、お、電話架けて来やがった…。急いているのか。
「あ、ふ。はい?声が聞きたくなったのか?」
緊張感は全くと言っていい程ない。欠伸が出た。
「あ、もう、そんな悠長な。今、話せます?」
起き上がり、裸の身体にシャツを被った。
「…ん…大丈夫だ、何焦ってる、何が大変なんだ?」
携帯を持ち替えながら腕を通し胡座をかいた。
「梨薫さんが、部長の部屋に引っ越してしまいます」
「そうか」
「あ、また…そうかって…そんな言い方。驚かないんですか?も゙ー、…いいんですか?陽佑さんは」
「いいも何も、経緯は知らないが、本人が決めた事なんだろ?」
こんな事を聞かされて、驚いてない事はない。黒埼君は直接聞いたのかも知れないが、俺には連絡はないんだから。これは俺には特に伝えることではないということだ。俺にとっては聞かされなきゃ知らなかった事。…そういう事だ。そんな風に考えてしまうから、だから妙に冷めてしまうんだ。…ふぅ。
「そう言われたらそうなんですけど」
「何か?黒埼君はもう、梨薫ちゃんの部屋に行く事が出来なくなるから焦ってるのか?」
「そんな事を考えたところでもう無意味です。部長のとこに行っちゃうんですから。どこに居るんですか?」
とうとう決めたか…。ベッドから下りて部屋を出た。
「んー、今夜には店に出てる」
ギシギシと階段を下りた。これ、いつから鳴ってるんだろ。直さないとな…。
「もう…それはそれで。俺は今の居場所を聞いてるんです」
「まあ…別宅みたいなところだ。そこに居る」
「じゃあ、普段の部屋には居ないって事ですか」
「そうだ」
「解りました」
プツ。お、…切れた。臍を曲げたか。まあ、俺のこの反応では当然か…。黒埼君とは温度差があり過ぎたか…。
冷蔵庫を覗き、水を取り出し飲んだ。
飲む気もなかったが、何となく珈琲をセットした。