烏丸陽佑のユウウツ
「はぁ…梨薫さんも、もっと早い段階で言ってくれてたら。嘘みたいな話でも、合宿生活が出来てたかも知れないのに…。あ、でも、梨薫さんのとこはそんなでも無くて、酷いのは別の人の部屋らしいですけどね。真ん中の部屋が特に酷いって」
早く解ってたって合宿生活なんて無理な話だって…。
「あんまり飲むなよ?俺が止めるからいいけどな」
「…え?泊めてくれるんですか?」
「あー、何かそれ、違うぞ。俺が言ったのは、酔い潰れる迄は飲まさない、アルコールを提供するのを止めるからなって意味で言ったんだ」
「なんだ…そっちの止めるですか。部屋に泊めてくれるのかと思っちゃいました。…喜んで損しました」
「喜ぶってな、…違うだろ。当てにして飲むなって、言ってるんだよ。
部屋と言っても、事務所を兼ねてるんだから、基本、無理なんだ。
これ以上は突っ込んで聞くなよ?」
「それなのに、何故、使わせたかですか…」
「もう飲んでも一杯だけだからな」
「…スルーですか」
…。
「またスルーですか」
「先にもう聞くなって言ってある」
…。
「何だ、もう引き下がったのか」
「だって、聞くなって…あ、…はぁ。これに似たようなやり取りがありました。俺は…こんなんばっかりだ…」
「ん?」
また梨薫ちゃんとのエピソードだな。
「ある事をしたり言ったりしたら…まあ、当然拒否されたりだとか、します。俺はそこで、仕切り直しというか、再度、態度に現す事が出来なくて。…出来ないですよね、普通。嫌われたくないのもあるし、駄目かって諦めもあるから。しちゃいけないかなって。
そしたら、そこで引いたら駄目なんだって、ある時期に特化して言われました。もっと攻めて来いよ、的な事だったんでしょうが。…指導されました。それって…自分に都合よく考えたら、物足りなさみたいなモノを感じてくれていたんですかね。あれは…押してたら良かったって事ですかね」
「まあ、そうだろ。わざわざ言ってるんだから。駄目だって言われて止めるようでは所詮その程度の熱なのかってな。誰が相手でも、嫌われてもいいからくらいの気持ちで、ぐいぐい来なきゃ駄目だって、要求されてたんだよ」
…て、人には言える。黒埼君は決して嫌われてる訳じゃないからな。…だから梨薫ちゃんは何となく流されてしまう。だけど…駄目って言ったら止める、そこで間に合うと思ってる。素直に応じてくれると信じているからだ。…酷い事してるよな…梨薫ちゃん。実はそれだって甘いんだけど。男を嘗めてるよ。痛い目に遭ってないから解らないんだよな…。
「あー…、だったら、もう駄目よって言われても、まだまだ引いちゃいけなかったんだ。やっぱりそうか…」
もう駄目、ってか……何度黒埼君の口から聞かされた言葉か…。どこまでの話だよ…。
…何気に聞けば気になる…切羽詰まった言葉だよな…。どこまでして駄目って言われたんだよ…。大体じゃれ過ぎなんだよな日頃から…。いい大人の男と女が。それで好きだとは応えてやらない…。その感覚、こっちが解らなくなるよ…。
「テーブルに押し倒した事もあったのにな…」
は?…はぁあ゙?