烏丸陽佑のユウウツ


「あ、これは、また別日の話です。あの時は…はぁ、いけそうな気がしたんだけど、それも…そうだ、結局同じだ。もう駄目よって言われて、引き下がったんです。
結局俺が出来てる事と言ったら、不意に抱きしめる事くらいで。空しいですよね、本当…。子供だ。
キスは…殆どがほぼ棚ぼたみたいな、事故みたいなもんだし…はぁ…、気持ちはバレてるんだから、何したって好きだからしてるって、解ってるんだろうけど。
中途半端過ぎて、ずっと不完全燃焼のままなんですよね…。
マンション、引っ越そうかなって、そんな風に言ってたから。
本当…これがきっかけで、部長のところに本腰で越してしまうかもですよね。
…朝ですね…あ、会社での事ですけど。俺はまちまちってところがあるけど、梨薫さんも部長もきちっとしてるから、毎日ほぼ決まった時間に出社してるんです。二人共、早いんですよ。
……で、たまに俺も梨薫さんに出くわすんですけど。
部長とだって通路で会っちゃう訳です、ほぼ毎日。…梨薫さんは部長の事、昔から素敵な人だって…まあ、芸能人に抱くような感じでは思ってたって、教えてくれたんですけど。…はぁ。紳士、なんですよね…外見は勿論、シュッとしてるし、所作だって、内面だって、多分、紳士なんです。
全てで秀でているんです…。だから、俺が虚勢を張らないといけない訳、解りますよね。
…おはようございますって、梨薫さんが挨拶して、部長が返すんですけど。
たまに部屋に呼ばれる事があって…心配しちゃいますよ…。
部長室っていったら、入ってしまえば密室…。勝手に人は入って来ない訳だし。鍵だってかけられる。
…はぁ、…それだって、仕事の用かも知れないんですが…。ちょっとくらいは何かしら接触してるかも知れない。俺だって、いつも不意打ちしてる訳だし。
俺と同じ人間だと思っちゃいけないんでしょうが、梨薫さんを好きだという男の部分は同じですからね…。
何かしないはずは無いでしょ?
はぁぁ…個室持ちって狡いですよね」

「じゃあ、上に行けばいいだろ」

「そんな…。今、無理じゃないですか、なれるかどうかも解らないです」

「じゃあ、言っても仕方ないじゃないか」

「…はい。始めから仕方ない話です」

「部長さんは大人なんだから、会社でどうこうなんてないさ。したってせいぜい…、黒埼君と同じだ。思わず抱きしめたくなる衝動に負けるくらいだ。…キスは…梨薫ちゃんが拒否しなければありだろうけどなぁ」

…。

「…そんな…。じゃあ、部長の部屋に居たら…」
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