烏丸陽佑のユウウツ
「おぉ、銀士榔か」
「待ち人ではなかったか?悪いな」
何言ってる。...がっかりした顔つきでもしたかな。
思わず顔を撫でた。
「いや、そんなんじゃないさ。一人か?」
まあ、紫ちゃんとここには来ないか。どちらかと言えば、今は務君と紫ちゃんとの待ち合わせ場所だからな...。
「ああ」
「もう飲んでるのか」
「ん、先にお願いした」
「そうか。どうだ、順調か?」
「仕事か?プライベートの事か?」
「どっちでも」
「フ、どっちでもって、変な聞き方だな。言いたくなきゃ言わなくていいって事か。仕事は特に変わらず。自由にやってる。プライベートは…ドキドキしている」
「…あ。お前の口からそんな言葉が出るとはな…」
「フ。不安要素もあるから、毎日気が抜けない。束縛なんて初めから出来ない相手だ。…生きてりゃ、心変わりもあるだろ。そんなつもりで居ても、完全な刹那主義にはやっぱりなれないもんだ」
一口飲んで置いたグラスの氷がカランと鳴った。
「余程惚れてるんだな」
「ああ惚れてる。この歳なのに、堪らなく惚れてる。…夢中だ」
…。
「出来れば、ずっと居られたらいいと願っている。陽佑は?相変わらずなのか?」
「相変わらずって?」
「相変わらずは相変わらずだ。特定は居ないんだろ?仕事の中で楽しんでるのかって意味だ」
「…そうだな。何かさ…面倒臭いんだ…こうなったらもう駄目だろ」
「駄目って、恋になのか?相手になのか?そうでも無いんじゃないのか?って一応言っておく。諸々、上手くいってないからだろ?違うか?若い子じゃないんだろ?」
「ああ、まあ…。んんー、根本的な事だ。好きかどうかが解らない」
「どっちが」
「…向こうが」
「お前は?」
「もう止めた」
「だったらもういいじゃないか。止めたらそこで終わりだ」
…そう言ってしまえば、ちゃんちゃんて話も終わる。
「そうなんだよ。だけど…よく解らない行動をずっとされるとな…」
「何だ、まだそんな事言ってるのか。解りきった事だ。お前にだって、決めてもまだ心残りがあるからだろ。
…放っておけばいいさ。そうしてたらいつかお前が解ってくれるって思ってるんだろ?好きなら言わないのがいけないんだ。それ程、好きじゃないんじゃないのか?…まあ、どんな性格なのか知らないけど。
お前だっていつまでもフリーで居るなんて解らないのにな。その、相手の子は、誰かのモノになって初めて後悔するタイプかな…甘く見られてるな、陽佑」
…それって、いつまでも俺が思ってると向こうが思ってるって言ってるのか。
「シビアだな」
「人の事はな。向こうはお前が誰かに取られるとか思ってないんだよ。もしくは、…奪ってでも欲しいとか、それくらいの強い思いがない、とか。
必死になる程、恋しくなってないのかな…。それとも、馴れ合いか…。悪い、酷い言い草だな。
好きかも知れないけど、何か踏ん切りがつかないモノがあるとかさ。ある程度年齢があがるとさ、抱えてるモノもあったりするだろうし…」
当て嵌まりそうでもある部分…よく解らない部分でもあるな。