烏丸陽佑のユウウツ


……はぁ。仕事してる人間が、溜め息ばっかりついてどうするよ。
しかも、現実ではない、夢に惑わされてなんて…。

自分の頭がすっきり片付けば、見る内容の夢ではないんだ。
今は…見て当然と言えば当然か…そうだよな…。

いつも短時間、死んだように寝て起きてるんだ。それで充分なんだ。
肉体の疲れが足りないのかも知れない。

倒れ込む程疲れてしまえば、夢を見る余裕もなく眠ってしまうかも知れない。

かと言って…気張って重い物を運んだりしたら…腰に来るか。…。それは最悪だな。

何、夢にビビってるんだか…。別に何を見たって夢じゃないか…。
他人の見た夢には、散々何でもありだろ、なんて言ってたくせに。…ざまーないな。

不用意に見たモノで気持ちを掻き乱されたくないだけだ。なんで今更、こんな夢なんて…。
見るならもっと前に見せておけって話だ。それもどうかだが。


「陽、佑、さん!」

「…おお、黒埼君か、いらっしゃい」

こいつ…何か報告したい事があって来たんだな。

「ムフフフ」

「どうしたんだ?」

そんな緩んだ顔をして…聞いてくださいよ、って顔だろ?
だから聞いてやったんだ。

「…はあぁぁ。俺、今、ちょっと、いや、大分浮かれてます。顔も自然と緩んじゃうし、ふわふわしてるって言うか。…はぁ。あ、ここ、いいですよね?」

椅子に座るとマフラーを解いて横の椅子に丁寧に畳んで置いた。

解りやすい…。いい事があったって顔だ。
どう考えたって梨薫ちゃんと何かあった。
それしかないだろ。
もうこっちから、それでどうした、なんて聞いてやらないからな。

注文されたブルドックを出した。

「してくれたんです。梨薫さんから、しようって言ってくれて…」

…いきなり核心と来たか。
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