番犬男子
あたしが黙って人質のまま、ここにおとなしく居続けるわけがない。
なんとかして、逃げ出してみせる。
ここから逃げ出すのは、そう難しくはない。
倉庫の外がどうなっているかは、脳内にある地図で大体わかっている。
そのため、あの2人さえかわせれば、たった1つの出入り口であるシャッターから抜け出すことは可能だ。
だけど。
やはり、あの2人の意識があたし以外に向けられていなければ、すぐに捕まってしまうだろう。
しかも、あたしは腕を拘束されているから、動きにくく、より捕まりやすい。
せめて、この腕を自由にできたら…………って、あれ?
目覚めてからほとんど寝てるフリをしていて、あまり体を動かさなかったからわからなかったけど。
ロープの結びが、想像以上に緩い。
ずっと拳を握りしめていたせいだろうか。