番犬男子
もしも。
本当に幸汰があの場に出くわしていたとしたら。
あくまで仮定の想像をして、フッ、と小さく噴き出してしまった。
……うん、ないな。
お兄ちゃんたちは、来ない。
確信に近い気持ちで、改めて、そう思った。
「なあ」
「んー?」
バイク男が強盗犯にかけた声で、ビクッと我に返った。
今はお兄ちゃんじゃなくて、逃げることを考えなくちゃ。
強盗犯の会話で情報は得られたけど拘束までは無理だったから、2人が話してるうちに拘束を解いておかないと。
「そろそろ仲間呼んどいたほうがいいんじゃね?」
ロープに専念しだしたあたしの心臓が、ドクン、といやに跳ねた。