番犬男子





もしも。

本当に幸汰があの場に出くわしていたとしたら。




あくまで仮定の想像をして、フッ、と小さく噴き出してしまった。



……うん、ないな。


お兄ちゃんたちは、来ない。



確信に近い気持ちで、改めて、そう思った。





「なあ」


「んー?」



バイク男が強盗犯にかけた声で、ビクッと我に返った。



今はお兄ちゃんじゃなくて、逃げることを考えなくちゃ。


強盗犯の会話で情報は得られたけど拘束までは無理だったから、2人が話してるうちに拘束を解いておかないと。




「そろそろ仲間呼んどいたほうがいいんじゃね?」



ロープに専念しだしたあたしの心臓が、ドクン、といやに跳ねた。



< 163 / 613 >

この作品をシェア

pagetop